テレビ報道を考える!! 日本大学 藝術学部 放送学科 「放送特殊研究V」ブログ

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開設:2006-05-25 (通年 4単位 3年以上 選択 江古田校舎 放送学科専門科目)

日本大学藝術学部放送学科「放送特殊研究V」(担当講師/坂本 衛)のブログ。2017年度のテーマは「放送・報道における日本語表現の研究」です。

【事例】裏づけのない報道の信頼性 2017-07-31


【事例】裏づけのない報道の信頼性

日時 2016年12月14日午後以降

番組 特定せず。ただし、多くの新聞やテレビが基本的に同じような報道をした。

症例 オスプレイの不時着または墜落大破の報道で、在沖縄米軍トップが「県民に被害を与えなかった。感謝されるべきだ」と開き直った、と多数のメディアが報道。これは、在沖縄米軍トップに抗議に出向いた安慶田《あげだ》光男副知事が、会見後に記者団に語った内容に基づくもの。なお、会見は非公開。

報道の例(メディア報道いくつか)
安慶田光男副知事の記者団への説明(局不明 2016年12月14日午後)

在沖縄米軍トップ「感謝されるべきだ」(琉球新報 2016年12月14日 14:50)
※ごく短い共同通信の配信記事で、以下は全文。テレビ各局の報道部門は配信時にこれを把握していると思ってよい。
〈在沖縄米軍トップがオスプレイ不時着に関し「県民に被害を与えなかった。感謝されるべきだ」と述べた。(共同通信)〉

「感謝されるべきだ」 沖縄米軍トップ、オスプレイ抗議に机たたき反発(沖縄タイムス 2016年12月14日 18:14)

オスプレイ事故 沖縄米軍トップに直接抗議 沖縄副知事(毎日新聞 2016年12月14日 20:14)

在沖縄米軍トップ記者会見映像(約45分、米軍がネットで生中継)
在沖米軍トップ記者会見の米軍提供映像(2016年12月14日 15:02~ III MEF Marines Facebook: Live)
※在沖縄在日米軍のトップは、ローレンス・ニコルソン在日米軍沖縄地域調整官・海兵隊第三海兵遠征軍司令官(中将)

分析
【1】各メディアの第一報は、副知事だけの説明だけに基づき、録音テープなどの証拠や、名指しされた本人への確認取材といった裏づけはない。副知事(または通訳)に、誤解・聞き間違い・極端な強調・意図的に触れない内容などがあった場合は、報道が事実と異なることがありうるが、視聴者はわからず、ふつうは「副知事のいうとおりのことがあった」と思ってしまう。

【2】ニコルソン中将の会見映像では、冒頭で「遺憾である」「遺憾とは謝罪の意味だ」と述べたほか、おおよそ「パイロットは民家の上を飛んで基地に帰投せず、海岸に下りる決断をした」「その結果、沖縄市民を危険にさらさずにすんだ」「入院中の若いパイロットたちを誇りに思う」(「パイロットの様子は」と聞いた記者に、よくぞ聞いてくれた、よい質問をありがとう)「熊本地震で救援活動をしたオスプレイも空中給油を受けた」といった発言をした。会見最後には深々と頭を下げてお辞儀をしている(米軍人が日本以外では決してやらない行為。相手が王様でも敬礼が最高儀礼で、お辞儀はしない。米軍が極端に気をつかっていることはたしか)。

【3】副知事と海兵隊中将のどちらが信用できそうかは、受講生が各自調べて判断せよ。その結果が、報道から国民が受けた印象と大きく異なるのであれば、報道に問題があったことになる。

【4】一般論をいえば、リーダー格の米軍人は、ただ軍事に明るいだけでなく、人間として総合的に優れていることが多い。これは、実際に戦争で部下を死なせている本人の経験、昇進や司令官任命の厳しさ(兵士の生き死と直結するから厳しい)などによる。自衛隊の幹部とはまったく比較にならない。

(たとえば、ホワイトハウス入りしているマティス国防長官[元海兵隊大将]、マクマスター補佐官[陸軍中将]の学歴・戦歴・著作や人となりをネットで調べれば明らか。米軍人は米政治家より米国民からはるかに信頼されており、人気も高い。なお、ニコルソン中将はイラク戦争時にマティスの部下。ファルージャの戦闘で重傷を負い、人事不斉で病院に担ぎ込まれ、ベッドで目を覚ましたら、脇でマティスが静かに読書をしていたという)

【5】なお、安慶田副知事は、2015年の公立学校教員採用試験で、特定の受験者を合格させるよう県教育委員会に働きかけた(関係者によると、副知事室に県教委職員らを呼び出す、職員に電話するなどして、複数の受験者について合格を口利きした)疑惑が表面化し、17年1月下旬に事実上の引責辞任。これだけでも胡散臭い人物のようだ、と思って当然。

処方
【1】特定の人物だけにもたれかかって報道するな。必ず裏を取れ。

【2】とくに評判が必ずしもよくない人物の発言には注意せよ。

【3】視聴者や読者に阿る《おもねる》報道をするな。視聴者や読者の意見や感じ方と異なる報道をすることを、恐れるな。

オマケ

この画像に、〈在沖縄在日米軍のトップが記者会見でオスプレイ事故を説明。冒頭で「遺憾であり、これは謝罪の意味です」と述べ、会見が終わるとき深々と頭を下げた〉という文面をつけて、新聞やテレビで報道しても、別に間違っていない(報道の例に挙げた例が問題ないならば、同じように問題ないといえる)ことに注意。つまり、報道は「印象操作」ができるわけ。

【坂本 衛】

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●ブログ開設は2006年ですが、1999年からマスコミ演習、マスコミII、放送特殊研究Vといった授業を担当しており、2005年以前のレジュメなど古いものも置いてあります。(坂本 衛)