テレビ報道を考える!! 日本大学 藝術学部 放送学科 「放送特殊研究V」ブログ

テレビ報道を考える!! 日本大学 藝術学部 放送学科 「放送特殊研究V」ブログ

開設:2006-05-25 (通年 4単位 3年以上 選択 江古田校舎 放送学科専門科目)

日本大学藝術学部放送学科「放送特殊研究V」(担当講師/坂本 衛)のブログ。2017年度のテーマは「放送・報道における日本語表現の研究」です。

スポンサーサイト --------

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第3回 放送(とくにテレビ)とは、どういうメディアなのか? 2017-04-28

第1回で、報道のさまざまな問題を「日本語表現」という切り口で考えていくと話した。第2回で、日本語とはどんな言語かを駆け足で解説した。第3~4回では、放送・テレビとは、そのなかの報道とは、を見ていく。

●放送(とくにテレビ)とは何?──と学生に聞くと

学生A「公共に向けて送る映像」
坂本ツッコミ「公共って何? 私人向けは? すべての人? みんな? 映像だけ?」
学生A「えーと、公衆向けの電気通信(by 本橋せんせい)」
坂本ツッコミ「電話は公衆向け(公衆を対象とする)電気通信だが、不特定多数に送るって意味? テレビ・ラジオ以外のツールで緊急警報を不特定多数に送ったら放送に含めるわけ?」 

学生B「放送局が、映像と音声を視聴者に‥‥‥」
坂本ツッコミ「ちょっと待った! 放送を定義するのに『放送』って言葉使ったらダメじゃん。視聴者も『放送を見聞きする人』だから、放送の説明には使えないよ」
学生B「えーと、電気通信(電波?)事業者が映像と音声を人びとに送り伝える手段」

学生C「だいたい同上かと」

《坂本意見》

●ある概念を説明する(定義する)ときは、その概念とレベルが異なるやさしい/基本的な/一般的な/みんなが意味を知っている言葉だけを使わなければダメ。自分の使う言葉の意味・レベルをわかっていない学生が非常に多い。説明を求められたら「使う言葉を吟味する」癖をつけよう。よい方法は、自分のよく知っている子ども(弟妹とか甥っ子姪っ子とか)や年寄り(祖父母とか)に対して、この説明をしたとき通じるだろうか、とつねに意識することである。

●レベルが同じ言い方を「トートロジー(同義語反復)」という。
例)忘却とは忘れ去ることなり

例は、ラジオドラマ「君の名は」の冒頭ナレーション。修辞学(レトリック)技法の一つで、あえてくどくいう印象づけ・強調表現としてありうるが、説明にはなっていない。

●なくてもよい言葉を「冗語」といい、トートロジーもその一つ。「馬から落ちて落馬する」「白い白馬にまたがって」「頭痛が痛い」の類い(重語、二重表現)も冗語。おもしろ表現だが、そうとは知らず使われることも少なくない。

例)「わが巨人軍は永久に不滅です」(長嶋茂雄、現役引退スピーチで)※不滅は永久に滅びないという意味だから、実は「巨人軍は永久です」または「巨人軍は不滅です」だけでよい。
「クーポン券」「チゲ鍋」※外来語+同じ意味の日本語。

●「同じ言葉を重ねる」トートロジーや重語と対照的なのが、「正反対の言葉を重ねる」撞着語法。※撞着≒矛盾

例)負けるが勝ち、小さな巨人

●放送(とくにテレビ)とは──坂本による定義

「テレビとは、見えるものや聞こえるものを電気信号に変換し、離れた場所に送って、多くの人が見たり聞いたりできるようにするシステム」

※この定義は、現在、放送やテレビ(の制度)に含まれないインターネット放送(テレビ)も含んでしまうことに注意。厳密には、上記の言い方に「のうち、多くの場合は国単位で放送制度として認められ運営されているもの」とでも付け加えればよい。

詳しくは以下を熟読のこと(比較的若い放送局員むけに話した内容)。

テレビの原理と放送局
(テレビとは? 地上放送局とは?)


キモは、電気信号(映像・音声)への変換、みんなに送信。

●放送(とくにテレビ)とインターネットとの違いは?

両者の違いを吟味することは、放送やテレビを知るうえで、また過渡期にあるネットの報道を考えるうえで、おおいに役立つはずだ。

《学生意見まとめ》
テレビは一方向(1対多)、ネットは双方向(多対多)。
テレビはプロがつくる、ネットは誰でもつくれる(コンテンツ)。
テレビは大規模、ネットは大~小規模さまざま(施設、コンテンツ)
テレビはターゲットが広い・あいまい、ネットは狭い・細分化。
テレビは一回きり、ネットはSNSなどで拡散。
テレビは免許あり、ネットは免許なし。
テレビはコンテンツ数が少ない、ネットは膨大。

詳しくは以下を熟読のこと。

インターネット(パソコン)と放送(テレビ)何がどう違うか?

【坂本 衛】
スポンサーサイト

第2回 日本語とはどういう言語だろう? 2017-04-21


●日本語とは?

・主に日本国内や日本人同士の間で使われている言語
・系統不明な「孤立言語」
 (アルタイ語族? 南島語族? それらの混合?)

ネットユーザー統計
日本語の起源(Wiki)
ウラル・アルタイ語族(同)※現在では別のものとして分類
オーストロネシア語族(同)

●日本語の特徴は?

・膠着語(言葉に活用語尾や助詞の類いがくっつく a→a+x)
 ⇔屈折語(くっつかず言葉そのものが変わる a→A)
・SOV型
 ⇔SVO
・題述構造(象は餌をやった 象は歩く 社長は私だ)が頻出する
 ⇔主述構造(象が歩く 象は歩く 私が社長だ)
・修飾語が前にくる
 ⇔修飾語が後ろにくる
・敬語(尊敬・謙譲・丁寧・美化など敬意表現)が複雑で多様で微妙
・和語・漢語・外来語が混在
・擬声語(擬音語・擬態語、オノマトペ)が多い

日本語(Wiki)
膠着語(同)

●ということは、日本語表現には……

・主語がはっきりしない(場合がある)
例)社長である。
→シチュエーションによって、意味が違う。
 「責任者は誰か?」と聞かれて……社長だ(と私は思う)。
 朝礼の第一声で……私が社長だ(わかってるね)。

・何が言いたいか、結論は何か、すぐにわからない(場合がある)
例1)
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 We believe that no nation is responsible to itself alone, but that laws of political morality are universal; and that obedience to such laws is incumbent upon all nations who would sustain their own sovereignty and justify their sovereign relationship with other nations.

例2)
首相は、……で、そのうえ……であるから、高く評価できる。
首相は、……で、そのうえ……であるから、高く評価できるか?
首相は、……で、そのうえ……であるから、高く評価できない。

・文の(本来の、直接的な)意味以外の意味が通じる(場合がある)
例1)ありがたい。……めったにないことである。(感謝)
例2)お待たせしました。……私はあなたを待たせたところである。(謝罪)
例3)申し訳ありません。……申しあげる言い訳が存在しない。(謝罪)
例4)謝罪したいと思います。……(謝罪?)

・曖昧/微妙/細やか/間接的/感情的/消極的/婉曲/遠回し
 といった表現が多い(ようだ)。
以上が日本語そのものの特質か、話す日本人のせいでそうなっているのか、その両面があるのかは、また別の問題。英語とだけ比べて「日本語は特殊」「曖昧」「非論理的」などと考えるのも早計。

●そこで、あれこれ考えよう

・以上のような問題は、放送や報道の日本語表現に、どのように表れているだろうか?
・それを、日本の放送や報道の問題点といえる場合があるだろうか?
・いえるならば、どうすれば問題が改善されるだろうか?

●推奨本

三浦つとむ『日本語はどういう言語か(講談社学術文庫)
送料込み400~500円で入手できるならば、一読を勧める。

【重要】
1)受講生は、坂本にメールを出してください。
2)坂本からの返信が受信できることを確認してください。PCメールをハネる設定にしている者が多いので。
3)ノートを用意し、メモを取りなさい。本ブログを書き写すようなムダはしないこと。
4)前回と今回のブログにコメントしなさい。次回以降も同様。
5)なお、以下に留意のこと。『Newsweek日本版』は2010年7月、「イギリスのある調査では、アンケートに回答した企業経営者の半数が、就職希望者の未熟な面(酒におぼれたエピソードや不法行為の写真、文法の間違いなど)をフェースブック上で発見した場合、採用を見合わせると回答した」という趣旨の記事を掲載した。


【坂本 衛】

第1回 【前期ガイダンス】なぜ、いま「放送・報道の日本語表現」を研究するか? 2017-04-14


1)自己紹介

坂本衛のプロフィール(経歴)
坂本衛facebook
最近の本の仕事その1 佐藤優・田原総一朗『この世界を知るための教養』(アスコム刊)
最近の本の仕事その2 榊原英資『日本国債が暴落する日は来るのか?』(ビジネス社刊)

2)この授業について

本年度シラバス
授業の目的は次の二つ。
1)放送・報道がヒドい状況だ。それらは日本語表現。だから研究する。
2)学生諸君は日本語表現が苦手(なはず)。それを学ぶことになって一石二鳥だ。

3)坂本がヒドいと考える放送・報道の例

・熊本地震報道から……「無数のブルーシート」「果てしなく続く地割れ」「完全に横倒し」「1階が完全に潰れ」
坂本Facebook記事(2016年4月15日)
坂本Facebook記事(2016年4月17日)

・鳥取大雪報道から……「スリップ防止のためか、通行止めです」
坂本Facebook記事(2017年2月13日)

・誰かの発言を右から左へそのまま伝えるのが報道の役割か? メディア=媒体=二つの間にあるもの。油絵で絵の具を溶く油をメディウムといい、色がついていると困る。報道も無色透明でいいのか?

・国旗上下の話(これは別にヒドくない。文句つけるほうがヒドい例)

4)質疑応答

・なぜ、報道する者は大げさに、過剰な修飾語(形容詞や副詞)を連ねて報じるのだろう?
(学生)誇張したいから。
(坂本)いやいや。だから、なぜ、誇張したいの?
 報道者が「すごい」と興奮し、舞い上がっている。
 自分は「すごいこと」を伝えている、と伝えたい。

・「形容詞を使うのはおやめなさい」「あなたは『美しい』という言葉を一切使わずに風景を描写なさい。『美しい』と思うのは読者です」(ナルニア物語のC.S.ルイスが、読者の手紙に答えて)
・学生Aの質問:ヒドい報道をなくしていくには、どうすればよいか?
・学生Bの質問:報道が無色透明でないならば、その色を見定めるには、どうすればよいか?

【坂本 衛】

表紙(最新ページ)へ

月めくり

≪≪ 2017-04 ≫≫
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -

年月別の記事

内容別の記事

3.11巨大地震発生から

最近の記事10

最近のコメント10

主宰者から

日本大学藝術学部放送学科

●このブログは、日本大学藝術学部(日芸またはNGと略)放送学科の授業の一環として設置しています。学外の方も自由に閲覧やコメントしていただけます。学生らの活動を厳しく、ただし温かく見守っていただければ幸いです。学生には「ブログ炎上も授業のうち」といってあります。

●ブログ開設は2006年ですが、1999年からマスコミ演習、マスコミII、放送特殊研究Vといった授業を担当しており、2005年以前のレジュメなど古いものも置いてあります。(坂本 衛)
 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。