テレビ報道を考える!! 日本大学 藝術学部 放送学科 「放送特殊研究V」ブログ

テレビ報道を考える!! 日本大学 藝術学部 放送学科 「放送特殊研究V」ブログ

開設:2006-05-25 (通年 4単位 3年以上 選択 江古田校舎 放送学科専門科目)

日本大学藝術学部放送学科「放送特殊研究V」(担当講師/坂本 衛)のブログ。2012年度の授業テーマは「[実践!]ネットは放送を殺すか?──ネットを理解することで、放送をより深く知ろう」。

テレビ報道は必要か? 2011-09-30

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テレビ報道は必要か?
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●学生たちのテレビ報道に対するイメージ

・信用できない。疑わしい、眉唾報道が散見される。
 例)2007年11月の香川・坂出(祖母・孫娘2人)殺害事件で、明らかに父親を犯人視する報道をしていた。

・あまり見ない。NHKニュース以外みんな同じ印象(芸能、ワイドショー報道っぽい)。見るのは、みやねや、ニュースZEROとか。

・ニュース映像に音・ナレーションがおどろおどろしく入る。怪しい、危うい感じを強調している。感情面を煽っている。

・世界の動きがすぐわかる。コメンテータが胡散臭い。彼らとは距離をおきたい、と自分は思っている。

【参考】
香川・坂出3人殺害事件(Wiki)
「感情増幅」装置としてのテレビ――テレビは、なぜ感情を増幅するか?(坂本サイト)
TVニュースの価値判断 テレビ報道のなにが問題か!?(同)


●すぐ「わかる」点は全員が評価。では、テレビ報道だと、なんですぐわかる?

・映像を使うから
→映像は(活字や音声と比べて段違いに)情報量が多い。「見る」行為には説明や翻訳が要らないうえに、音声情報が付され、多くは話し言葉なのでにわかりやすい。しかも、情報全体を短く整理してある。

・電波を使うから
→速報性、同時性(生)、映像情報の全国的な同時共有(テレビ放送の最大の特質であり美点)。

・比較的安価なテレビ受像機が広く普及しており、ランニングコストも低いから


●ただし、「わかる」ことのマイナスも、少なからずある

・わかる映像にするために、編集やカットで「切り捨て」が起こる。

・カメラ映像が、すでにして意図的に「切り取られた」(ほとんどのものを切り捨てた)映像。

例1)イラク戦争のバクダッド解放でフセイン像が倒される映像……全世界に配信された映像では、民衆がフセイン像を引きずり倒したように見える。だが、画像の外側で引っ張っていたのは米軍の「装甲回収車」(戦車回収車。戦車その他の装甲ボディを利用した車両で、戦車部隊についいき、行動不能になった戦車を牽引・修理などする。タグロープや牽引具も積んでいる)。

例2)正月の皇居一般参賀の映像……カメラを設置する撮影場所があらかじめ決められており、テレビでは画面いっぱいに映り込んだ民衆が皇族を歓呼で迎えているように見える。横から見ると、広い敷地のごく一部に人々が集まっているように見える。

・何でもかんでも二項対立、YesかNoか、白か黒かにもっていく。



↑すべての物事にはグラデーションがついているわけだが、↓こう解釈してしまう。



・わからないことは「両論併記」で逃げる→判断停止、思考停止、「長いものに巻かれろ」主義。


●映像は疑似現実。「わかる」気がするが、本当にわかっているのだろうか?

・見る者は体験によって蓄積した理解の仕方によって、映像をそれなりに理解し、「わかった」気になってしまう。

例)「政治家××の乗った東海道新幹線のぞみ××号N700系が東京駅×番線ホームから×時×分に大阪に向けて発車し、次第に速度を上げていった。ホームには見送りの人が10人ほどいて、手を振るなどしていた。その8割方が男性で、みな寒いのでコートを着込んでいた」
→的確な映像であれば、以上をわずか数秒で伝えることができ、10人の顔の表情まで細かくわかる。だが、「わかる」程度は見る人による。「N700」という文字を見ても、意味がわからない人にはわからない。時計が一瞬映り込んでも見逃す人もいる。政治家××の顔を知らなければ、誰が乗ったのかわからない。

・映像に映らず、テレビが伝えない情報が、実はものすごく多い。ある事象の映像だけを見ても、同時に背景、経緯、今後の成り行き、日本の政治・経済・社会や私たちの生活にとっての意味を伝えなければ、わからない場合が多い。テレビ報道はそれらを伝えることが苦手だ。


●コメンテータは、何のためにいるのか?

・楽しくする、盛り上げる、身近でとっつきやすい雰囲気を出す、賑やかし。
・アクセントをつける、間を持たせる。
・一般人の視点から質問、意見などを述べる。
・事件のポイントを念押ししたり、ややくわしい解説をしたりする。

・ド素人で、とんでもない意見、誰でも知っているどうでもよい意見、くだらない感想などを述べる無責任な者も少なからずいることに注意。

・「井戸端会議」ふうな演出
→そもそもテレビは、全日本規模の巨大な井戸端会議である、またはその機能が大きいというのが、坂本見解。
→井戸端会議は、ビジネスの会議や官公庁の会議とは違う。多くを期待しても仕方ない。
→ただし、現実の井戸端会議が、町内のある一家の評価を決定づけてしまい、いじめたりつまはじきにしたりするというようなことが、テレビでも起こりうる。全国規模で起こってしまうことに注意。


●昔はコメンテータという者はいなかった

ストレートニュース(NHK定時のアナが読むニュース)

キャスターニュース(TBSの夕方ニュース)

キャスター+女の子+コメンテータのニュース(ニュースショー)

コメンテータが数人並ぶワイドショー(のニュースコーナー)


●ニュースのショー化、バラエティ化、わかりやすいニュースへ

・必然ともいえる以上の流れで、失われたものをいかにすくい取るかがテレビ報道の課題。

・テレビ報道が自律してその課題に対処できないのであれば(もちろんできていない)、テレビ以外のメディアに目を向けテレビのウェイトを小さくするなど、視聴者の側で対処が必要。


【坂本 衛】

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●このブログは、日本大学藝術学部(日芸またはNGと略)放送学科の授業の一環として設置しています。もちろん学外の方も自由に閲覧やコメントしていただけます。学生らの活動を厳しく、ただし温かく見守っていただければ幸いです。学生には「ブログ炎上も授業のうち」といってあります。

●ブログ開設は2006年ですが、1999年からマスコミ演習、マスコミII、放送特殊研究Vといった授業を担当しており、2005年以前のレジュメなど古いものも置いてあります。(坂本 衛)