テレビ報道を考える!! 日本大学 藝術学部 放送学科 「放送特殊研究V」ブログ

テレビ報道を考える!! 日本大学 藝術学部 放送学科 「放送特殊研究V」ブログ

開設:2006-05-25 (通年 4単位 3年以上 選択 江古田校舎 放送学科専門科目)

日本大学藝術学部放送学科「放送特殊研究V」(担当講師/坂本 衛)のブログ。2017年度のテーマは「放送・報道における日本語表現の研究」です。

尖閣漁船衝突映像を考える 2010-11-12

2週間、諸君の顔を見ていなかったので、今日は話・議論をしよう。

●配布資料に関して

○報道活動部門ギャラクシー賞受賞「報道活動」を見て、制作者と語る会(案内チラシ)

→テレビ部門があるのに、なぜ報道活動部門なのか。
→13日に江古田に来る、つまり2009年度に高く評価された報道活動は地方局ばかりだ。なぜか。一昨年、昨年と同様の催しをやっているが、見た学生はみな「おもしろい」という。だから、諸君も見なさい。で、東京で見る報道とどこが違うのか、考えてみよう。

○毎日新聞2010-10-25記事

→見出し「情報途絶、許されない 実態調査の手法に問題点」の例は、たとえば……(以下略)。
→興味のある人は、次のページを読むとよい。
「地上デジタル放送完全移行の延期と現行アナログ放送停止の延期を求める」記者会見・提言発表

●尖閣漁船衝突映像を考える

○先週11月5日の授業では「みずきとの衝突」(3分32秒)を流した。その前日4日午後9~10時頃にYou Tubeにup、朝にはアカウントが消えていた。それを午前10時40分からの授業で流すてのは、なかなかエグい。日本の大学でほとんど最速だぜ。もう一度見てみよう。

「よなくに」船尾にぶつけた最初の衝突(11分25秒)
「みずき」右舷にぶつけた二度目の衝突(3分32秒)

→十数人の受講生中、この映像を見たことのある者がほとんどで、ネット(You Tube)で見た者とテレビ(ニュースなど)で見た者がほぼ半々。この授業で初めて見た者が二人(感想A:もっとドーンと衝突したと思っていたので、それよりは大したことのない衝突だ。感想B:黒煙が上がったので、思っていたよりヒドい衝突だ)。なお、黒煙はディーゼルエンジンからで、加速して離脱を図ったためだと、別の受講生の指摘あり。

○これは「事実」を撮影した映像だが、この映像だけで、感情的に反応したり、判断したり、行動を起こしたりすることは危険だ。次のような考え方が必要だろう。

→流出したのは、十数時間分ほどあるとされる映像のうち44分だけ。これがすべてではない。たとえば、中国漁船(映像音声中の「該船」)船長を逮捕するとき、ぶん殴ったりしていないとも限らない(撮影中はやらないのが普通だが)。そういうことはありうると思っていたほうがよい。
→ぶつけてきたのは中国漁船側。逮捕は当然だ。日本の領海外(公海上)でも、ぶつけてくれば逮捕する。この教室内で誰かがナイフを振り回したら、俺やほかのみんなでぶん殴って逮捕してよいのだ(現行犯人は、逮捕状なしに誰でも逮捕できる)。日本の領海に海上保安庁にぶつけたら、暴走族がパトカーにぶつけるのと同じで、逮捕されて当然だ。逮捕どころか、相手が軍艦なら、撃沈されても文句は言えない。問題はその先である。
→逮捕されて当然の中国漁船のしょうもない行動を、どう処置するかは、この映像(が伝えていること)とは別の話である。たとえば、

・過去の同じまたは似ている事例と比較して、どうすべきか。(2004年上陸事件の対応は?)
・他の領土問題の事例と比較して、どうすべきか。(北方領土、竹島と比べてどうか?)
・日中関係全般と事件を比較して、どうすべきか。(互いに世界1位の輸入先、互いに米に次ぐ世界2位の輸出先というような日中関係は?)

などを考慮して対応するのは、当たり前。「映像を見れば明らかに悪辣な漁船だから、船長を逮捕、勾留、起訴、有罪に持っていくのは当然」なのではない。その政治判断をするのは内閣だ。外務省(外交の事務方)ですらなく、首相以下の官邸の判断だ。ところが、今回はそれがブレた。最初は起訴しようとし、中国が猛反発すると、船長を釈放した。で、衝突映像を見せないことにした。だから、そんなのあるかいと、海保職員が流出させた。
映像はつねに主観的、一方的、断片的なものだ。断片的とは、空間的(視覚的)・時間的にだ。どんな映像を見るときも、「その映像だけ」で映像の意味や価値を考えたり、判断材料にしてはいけない。

多くの政治家も、マスメディアも、多くの国民大衆も、以上のことがまるでわかっていないか、ほとんど忘れているように、私には見える。

→(以下は、授業ではハッキリとは言わなかったが)私は、別に親中派でも何でもないが、想像力を働かせれば、彼らが次のように考えたことは間違いないと思う。すなわち、

小泉政権は、2004年に7人の中国活動家が尖閣に上陸したとき、逮捕の後すぐに強制退去(送還)とした。6年後の菅政権は、2010年に酔っぱらいの船長が船を海上で日本のコーストガードにぶつけたとき、逮捕の後、勾留・起訴・有罪に持ちこもうとしているように見える。前原外相は対中批判を繰り返し、問題をことさら大きくしようとしている。なんでだ? 活動家の上陸と酔っぱらいの衝突、どっちが大事件なのだ? 日本政府は6年間に、対中政策をどう変えたのだ? 船長が有罪になれば、われわれの面子は丸つぶれ。国内の反日ナショナリズムを抑えられなくなったら、どうしてくれるんだ。

──日中間に非政府の太いパイプがあれば、そのルートでこれに近いことを言って寄こしたかも。それがなく、面子だけは気にする大国だから、在北京の日本大使を夜明け前に叩き起こしたりしたわけだろう。

→「外交というのは、相手があることだから『100対0』という結果はない。それを目指すと必ず失敗する」と田中均が、7月に琵琶湖塾に呼んだとき言っていた。その通りだろう。こっちが100のときは「60対40」くらいを落としどころにして、相手の逃げ道を作ってやるのが常道。ブッシュはイラクに対し「100対0」をやって失敗した。アフガンも失敗は明らか。日本の対北朝鮮政策が全停止中なのも「100対0」を求めているから。
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●ブログ開設は2006年ですが、1999年からマスコミ演習、マスコミII、放送特殊研究Vといった授業を担当しており、2005年以前のレジュメなど古いものも置いてあります。(坂本 衛)