テレビ報道を考える!! 日本大学 藝術学部 放送学科 「放送特殊研究V」ブログ

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開設:2006-05-25 (通年 4単位 3年以上 選択 江古田校舎 放送学科専門科目)

日本大学藝術学部放送学科「放送特殊研究V」(担当講師/坂本 衛)のブログ。2017年度のテーマは「放送・報道における日本語表現の研究」です。

日いづる國、血染めのスケッチ、戦ふ女性ほか(戦時下の映像その4) 2010-05-14

【5月14日、急な都合により坂本は欠席。すまん。米山明李助手に頼んで、以下の映像を見せてもらう】

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『日いづる國』
1929(昭和4)年 19分 文部省製作
総指揮/池永浩久 監督/長倉祐孝 撮影/酒井健三
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●【DVD付属の紹介文】文部省の『教化映画利用状況(昭和5年)』に「昭和四年十月、教化動員ノ趣旨ヲ闡明《せんめい》スル為映画「日出づる國」「覚めよ国民」「二つの世界」ノ三種ヲ製作シ道府県及び六大都市ニ交付ス」とある作品の一つで、いわゆる皇國史観に基づいて建国、蒙古襲来、黒船来航、明治維新、日清、日露戦争を劇映画仕立てでふり返るスケールの大きなスペクタル史劇。この映画の総指揮者、池永浩久は当時の日活京都撮影所長。後に東宝の重役として東宝國策映画をとりしきり、文字通りの國策映画『皇道日本』『大乗の國』を製作した。


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『血染めのスケッチ』
1937(昭和12)年 22分 振進キネマ社製作
製作/井上麗吉 解説/静田錦波
録音/岩谷サウンド電気研究所
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●【DVD付属の紹介文】町の子供たちに愛されていた紙芝居の青年が戦死。遺品は子供たちのために描いた戦争紙芝居の下絵であった。青年の妹が兄の遺志を継いで紙芝居を完成させ、子供たちに演じて見せるというストーリー。製作会社「振進キネマ社」の主宰者・井上麗吉は新派の出身、映画の語り口も新派的な色合いが感じられる。


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『国策短編シリーズ~八十億圓』
1938(昭和13)年 10分 聯合映画社製作
製作/加納千吉 指導/大蔵省國民貯蓄奨勵局
構成/大島 屯
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●【DVD付属の紹介文】日中戦争下の昭和13年度の国の総予算は、戦費48億5千万円、一般会計31億5千万円を合わせて80億円。これをまかなうために銃後の暮らしからムダとゼイタクをなくして、貯蓄に励み聖戦完遂に協力せよと呼びかける貯蓄奨励PR映画。

●戦争するときは、政府は戦時公債・戦時国債というものを発行して借金するわけだ。日露戦争のときはアメリカにカネを借りた。いまと同じね。鳩山政権の10年度予算は92兆円規模で、うち国債による借金が44兆円。つまり半分が国民に対する借金だ。「ん? 自分は国債なんて買った覚えはないけど」と思うか? 国債を買うのは郵貯、銀行預貯金、生保、年金など。つまり貯金したり生命保険に入ったりする人(たとえば君らの両親)は、間接的に国債を買っていることになる。日本の国債の9割5分は、以上のような日本人(日本企業)が買う。外国政府は、こんなヤバいものには手を出さない。ギリシャ国債を買った欧米銀行がヤバいわけだが、日本国債では同じことは起こらない。最初から買ってないからね。

●言えることは、日本国はもはや大規模戦争ができないってことだ。借金漬けだから、戦費が調達できない。イラク戦争なんてやらかすと、「10~20兆円×何年」という規模のカネがかかるからね。もちろんアメリカの戦費合計(一説には300兆円)でイラク全国民を買収したほうが、安上がりに決まってるじゃん。

●【追記】坂本の手元に『昭和十八年版 日本國勢圖會』(昭和18年12月20日発行)という本がある。それによると「支那事変勃発前の我が国債現在高は百億を少しく超える程度のものであったが、大東亜戦争の直前には之が約三百六十億円になってゐた。然るに昭和十七年十二月には遂に五百億円を突破」した。宣伝映画は、この100億くらいのときに、80億円貯蓄して国債を引き受けよ(銃後国民が消化せよ)って話。同時にこの本は「国債で財政を賄うことは之を経済的に云へば其の決済を将来の負擔に残すことであり、従つて将来に望を懸け得るならば相當多額の国債を出して決して危険な譯がなく」と書く。実際には、危険どころか、敗戦で全部紙切れになっちまった。「将来の負担」もその通りで、2010年度の国債44兆円のツケは、君たちや、君たちの子どもたち、そのまた子どもたちが払う。まだ、選挙権もないのに(なにしろ生まれてないからな)、日本政府の借金を返さなければならないことが、いまから義務づけられていると。私は、自分の孫には「こんな政府とは、おさらばせよ」と言うつもり。


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『内閣情報部選定 愛國行進曲』
1938(昭和13)年 11分 鱗映社製作
編集/増田和弘 録音/アサカ幸二
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●【DVD付属の紹介文】日中開戦の年、昭和12年9月に内閣情報部が募集し、5万8000編近くの応募作から選定した『愛國行進曲』(作詞 森川幸雄 作曲 瀬戸口藤吉)の歌唱指導映画。日本の四季の風景や、日中戦争の戦闘シーンなどの画面の上に曲のリズムに合わせて歌詞を示していく手法は、当時としては画期的なものであった。

●募集というのは歌詞。それに軍艦マーチの作者・瀬戸口藤吉が曲をつけた。とりわけ放送メディアがラジオしかない時代、音楽や歌は国策宣伝や戦意高揚のきわめて重要なツールだった。


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『戦ふ女性』
1939(昭和14)年 22分 朝日映画社製作
脚本・監督/永富映次郎 
撮影/田畑 雅 録音/近藤健郎 音楽/福田宗吉
指導/陸軍軍醫中将 広岡道明 後援/日本赤十字社
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●【DVD付属の紹介文】『日本文化映画年鑑(昭和15年)』の作品紹介には「皇軍の陰に、白地に赤の十字章の下、一死報国将兵に劣らぬ働きを続けている日本赤十字社救護看護婦の養成及び彼女たちの病院船に活躍の実際を示したもの」とある。

●朝日映画社は、もちろん朝日新聞社系。
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●このブログは、日本大学藝術学部(日芸またはNGと略)放送学科の授業の一環として設置しています。学外の方も自由に閲覧やコメントしていただけます。学生らの活動を厳しく、ただし温かく見守っていただければ幸いです。学生には「ブログ炎上も授業のうち」といってあります。

●ブログ開設は2006年ですが、1999年からマスコミ演習、マスコミII、放送特殊研究Vといった授業を担当しており、2005年以前のレジュメなど古いものも置いてあります。(坂本 衛)