テレビ報道を考える!! 日本大学 藝術学部 放送学科 「放送特殊研究V」ブログ

テレビ報道を考える!! 日本大学 藝術学部 放送学科 「放送特殊研究V」ブログ

開設:2006-05-25 (通年 4単位 3年以上 選択 江古田校舎 放送学科専門科目)

日本大学藝術学部放送学科「放送特殊研究V」(担当講師/坂本 衛)のブログ。2017年度のテーマは「放送・報道における日本語表現の研究」です。

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ドキュメンタリー青春「おれはガンじゃない! 片腕の俳優 高橋英二の1年半」(田原総一朗、1970年) 2008-10-24

●ドキュメンタリー青春「おれはガンじゃない! 片腕の俳優 高橋英二の1年半」

●東京12チャンネル(現・テレビ東京)で、1970年3月6日放送

●ディレクター/田原総一朗

●約25分

●概要

役者・高橋英二は、片腕をガンに冒された。手術で片腕を切り落とす前日の、高橋の独白から、ドキュメンタリーは始まる。そこから、全身を癌に冒されて高橋英二が息絶えるまでの1年半が、“高橋本人の語り”(何じゃそれ!)によって構成され、描かれていく超異色・衝撃ドキュメンタリー。こんなもん、よくテレビで流したもんだと、きっと驚くはず。映画・演劇学科も含めて必見の映像!

●田原総一朗談(2008年10月23日夜、田原が電話してきたので、ついでに聞いておいた)

田原「高橋英二が『演技とは、演技とは、演技とは……』と身もだえしするシーンの後、週刊現代が、高橋はガンではない、偽のガン患者だと書いた。すると活字というのは恐いね。高橋が、自分は偽のガン患者だ、自分は本当はガンではないのだと思い始めた。そして、田原と一緒にいると、自分はガンにさせられてしまうと思って、僕から逃げ出した。だから、しばらく撮影が中断した。それから5か月。高橋の芝居仲間の榎本陽介(後、TBS「調査情報」、故人)が、もう高橋が危ない、今日か明日かの命だと、僕のところへやってきた。亡くなる2日前、二人で病院に見舞いにいった。そこで、高橋は歌を歌った。テープで音だけ録り、撮影はしなかった。この歌を最期のシーンに入れてくれと高橋英二はいった。それが霊柩車のシーンだよ」

田原「実は、撮影したが、使っていないシーンがある。高橋が亡くなって、彼のお母さんが、彼を抱きしめるシーンを撮った。しかし、死体を抱いているからね。テレビでは使えないと思って使わなかった」

田原「原一男は、これに衝撃を受けて、僕のテレビのアシスタントをしばらくやった」

坂本「作り手が、被写体の生にずけずけ踏み込んでいって、その生き方や行動に関与し、いわば共同作業でドキュメンタリーを撮る。作り手と対象の『共犯』関係を取り結ぶと、田原さんや原一男もいう。そういうドキュメンタリーが、いまはないでしょう。対象と距離を置いて、対象に影響を与えないように、客観的に撮るというか」

田原「そうだね。ない。テレビでできないよね。高橋英二、おもしろいでしょ」

坂本「おもしろい。こういうドキュメンタリー、田原さん、何本も持っているんですか。20本とか持っている?」

田原「そんなにないよ。何本か。だってもとはフィルムで、会社に内緒で自分で持ち出して、自分でVTRにしてもらったんだから」

坂本「じゃ、ほかのも貸してください。上映会やりましょう」

田原「わかった」
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休講ご免。地上デジタル放送関連シンポジウムの告知 2008-10-17

●メディア総研から、シンポジウム開催のお知らせ

アナログ放送「終了」まであと1000日
公開シンポジウム「地デジ『完全移行』への道」


11月25日(土)、下記の要領でシンポジウム『地デジ「完全移行」への道』を開催します。テレビのアナログ放送終了・地上デジタル放送「完全移行」の予定日である2011年7月24日まで、あと1000日余りとなる10月25日に、アナログ終了に向けた取り組みの検証と展望を、さまざまな立場から議論する企画です。これからの放送における重要な問題でもあり、ぜひ多くの方々にご参加いただきたくお知らせいたします。

◆日時:2008年10月25日(土)13:00~17:00

◆会場:日本青年館 中ホール(東京都新宿区霞ヶ丘町7-1 
TEL:03-3475-2550 会場案内図

入場無料

◆主催:民放労連・メディア総合研究所

◆プログラム第1部:講演・冒頭発言
(1)上瀬千春(フジテレビ技術開発局役員待遇技師長)
(2)坂本 衛(ジャーナリスト)

◆プログラム第2部:パネルディスカッション
パネリストは上記2名に加えて、吉井 勇(月刊ニューメディア編集長)、
荒川顕一(ジャーナリスト)、赤塚オホロ(民放労連中央執行委員長)、
岩田 淳(テレビ朝日編成局)、コーディネーター/須藤春夫(メディア総研所長・法政大学教授)

●シンポジウムのA4チラシ(pdf)はこちら
日大マスコミII・放送特殊研究Vの受講生も、参加していいよ。

東京オリンピック (市川崑)その2 2008-10-10

●東京オリンピック/Tokyo Olympiad

●監督/市川崑

●1965年(カンヌ国際映画祭国際批評家賞)

●170分

●以下は、2回に分けての上映中に、暗がりの中で坂本が書き留めたメモから。駆け足のメモなので、思い違いなどもあるかも。気づいた人は訂正して。

・破壊と建設、高度成長のイメージ。
・ギリシャで聖火の採火。「ボッ」て音は、アフレコの効果音。あんな音、するわけない。
・広島の空撮。レニを連想させる雲のシーンあり。レニそっくり。
・聖火を見物する群衆。後ろからの映像。足下アップのジャンプ。レニ(「意思の勝利」でヒトラーを待つ若者たちの映像)そっくり。
・京都? 瓦屋根の上からの映像は、日本画風でおもしろい。
・富士山の裾野を行く聖火。有名な「やらせ」シーン。現実の聖火ではなく、煙を大量にはく特別製トーチによる「再現映像」。
・有楽町の旧都庁。
・選手入場。名調子はNHKアナ、実況中継時のもの。
・ドイツの足下アップ。カメルーン、コンゴも二人だけ。ソ連の赤いハンカチ……。
・聖火入場、点火。「ボッ」て音は、アフレコの効果音。あんな音、するわけない。
・太陽を背にする聖火台。同じ映像がレニにもあった。そっくり。
・鳩の飛ぶ音うるさすぎ。むろん効果音。
・100m男子決勝。部分のアップ映像はレニ的。スローモーション映像にナレーションがピタリ合う。つまりアフレコ。
・走り高跳び。背面跳びが、この時代にはない。米ソの仲良し対決。
・男子砲丸投げ。玉をこねくり回すコミカル映像。早回し?
・女子砲丸投げ。一瞬顔のアップで止める瞬間あり。
・棒高跳び。スロー映像。さまざまな方向、角度から。わざとらしい応援シーン。全体を通じてとてもレニ的。
・ハンマー投げ。雨。モノクロ。スロー。ハンマーを回収する裏方を描く。
・やり投げ。
・三段跳び。
・女子80mハードル。
・400mリレー。
・プレスセンターの様子。
・男子幅跳び。
・女子ハードル。日本選手に注目。効果音(口笛、でんぐりがえしする音)は全部アフレコ。
・チェコ女子体操チャフラフスカの有名なシーン。(踊りの)バレーか何かのような美の追求。
・体操の床運動などで、あり得ない音(手をついたドスッ、足のキュッキュ、体を回すときの音、着地の音など、過剰なアフレコ)
・吊り輪のキュッキュッという効果音。
・山下跳び、遠藤幸雄の活躍。鉄棒で大回転の風きり音。ありえん。
・チャド選手。唐傘を持たせる演出。足音(効果音)。※2004年のディレクターズカット(市川崑の再編集)では、創作がすぎたとの理由でチャド選手のエピソードを丸ごと削除。
・選手村風景、練習風景。
・選手村の夜。レストラン。コカ・コーラ。
・水泳(男子100m自由形、女子背泳ぎ決勝、400mメドレーリレー。アンカー映像は早回し?)
・女子100m自由形決勝。
・重量挙げ。足下のアップ、重さ調整の様子。
・レスリング男子。音楽の効果。映像との連動。
・ボクシング(フェザー級決勝)。ボクシングは全編モノクロ。なぜか? 長い廊下を歩く選手とセコンド。ボクシング物語の1シーン風。
・フェンシング。
・柔道、ヘーシンクの無差別級優勝。顔のアップ。
・フリーライフル。
・自転車。八王子の山の中の風景。東京郊外と思えないのどかさ。
・サッカー決勝。キック音はアフレコ。
・乗馬、バスケ、水球。
・このあたり、とりあえず種目だけ駆け足でぶち込んでおくという印象大。各種競技団体の要請があって、まったく触れないわけにも行かず、とりあえず触れました、盛り込みましたという感じ。※2004年のディレクターズカットでは、仕方なく入れた競技を省いてある由。
・インド・パキスタン宿命の対決。
・女子バレーボール。東洋の魔女。追い上げるソ連。繰り返されるマッチポイント。優勝決定後の、大松監督の孤独な姿。「俺についてこい」
・相模湖のカヌー。レニの冒頭の1シーンを思わせる、きらめく水面。
・ボート。
・ヨット。
・競歩。ユーモラスな尻の動きを強調。笑う子ども。
・近代五種。モノクロスチール写真での紹介。
・肩を痛めた一人の選手。ナレーション「4日目の水泳、この選手だけは平泳ぎで泳いだ」
・マラソン。アベベの力走。給水所のユーモラスな風景。レニとよく似ている表現。ゴール後、ピンピンして体操するアベベ。円谷、ラストで三着落ち。意識がほとんどないのではという、ギリギリのゴール。
・閉会式。感動的なエンディング。
・聖火のボーッと燃える効果音が小さくなっていき、消える。



東京オリンピック (市川崑)その1 2008-10-03

●東京オリンピック/Tokyo Olympiad

●監督/市川崑
●音楽/黛敏郎
●脚本/市川崑、和田夏十、白坂依志夫、谷川俊太郎
●撮影/宮川一夫、林田重男、中村謹司、田中正
●ナレーション/三國一朗

●1965年(カンヌ国際映画祭国際批評家賞)

●170分

●1964年10月10日~24日、日本で開催された第18回夏季オリンピック東京大会の公式記録映画。1940年にオリンピック東京大会が予定されていた(ベルリン大会の次)が、第二次世界大戦の勃発で中止。この大会が、日本初と同時にアジア初のオリンピックとなった。

●黒澤明が予算の関係で断り、今村昌平はじめ複数の監督に打診するもダメで、最終的に市川崑が引き受けたとされる。国内配給収入は12億2321万円を記録。各地で上映会が開かれ、戦後復興を果たした日本を象徴する映画として、広く歓迎された。芸術性の高い作品としても評価されたが、河野一郎が「記録性に欠ける」と批判し、「記録か芸術か」の論争を招いた。

●当授業の受講生にとっては一目瞭然である通り、レニ・リーフェンシュタール「オリンピア」から甚大な影響を受けており、ほとんどレニへのオマージュと受け取ることができる映画だと、坂本は思う。1965年当時、もっと多くの人びとが「オリンピア」を見ていれば、(ヒトラー礼賛映画に似すぎているという理由から)タダではすまなかったのではないか、とすら思う。

●当然、「オリンピア」同様の、創作、過剰な演出、いわゆる「やらせ」スレスレの映像が多い。詳しくは次回。


行き行きて、神軍(監督・撮影/原一男) 2008-07-04

●行き行きて、神軍

●1887年 疾走プロダクション作品

●122分

●監督・撮影/原一男
●製作/小林佐智子
●録音/栗林豊彦
●編集・構成/鍋島惇

●日本映画監督協会新人賞、ベルリン映画祭カリガリ映画賞、日本映画ペンクラブベスト1位、毎日映画コンクール監督賞ほか

原一男ブログ

作品紹介

疾走プロ

●疾走プロサイトの惹句

87年の日本映画界を震撼させた驚愕の作品。
天皇の戦争責任に迫る過激なアナーキスト・奥崎謙三を追った衝撃のドキュメンタリー。
神戸市で妻とバッテリー商を営む奥崎謙三は、たったひとりの「神軍平等兵」として、・神軍・の旗たなびく車に乗り、今日も日本列島を疾駆する。
生き残った元兵士たちの口から戦後36年目にしてはじめて、驚くべき事件の真実と戦争の実態が明かされる…。
平和ニッポンを鮮やかに過激に撃ち抜いた原一男渾身の大ヒット・ドキュメンタリー

●あらすじ(注意 ネタバレあり

神戸市でバッテリー商を営む奥崎謙三は、ニューギニア戦線の生き残り兵士で。かつて、死んだ戦友の怨念を込め、「ヤマザキ、天皇を撃て!」と叫びつつ、天皇にパチンコ玉4発を撃った。映画は、その奥崎が新左翼過激派の結婚式に立ち会うシーンから始まる。

奥崎はニューギニアに埋葬した島本一等兵の母を訪ねた。島本の母は墓の前で、「岸壁の母」を歌う。奥崎は、母をニューギニアに行こうと誘う。

奥崎の所属した独立工兵第36連隊では、終戦後20日以上たってから、「敵前逃亡」で兵士二人が銃殺された。奥崎は、吉沢徹之助の妹・崎本倫子、野村甚平の弟・寿也とともに、処刑に関与した上官らを訪ね、当時の状況を聞き出そうとする。

語りたくない、決して語ってはならないという者、処刑の様子を語り空砲を撃ったという者、上官の命令は絶対と述懐する者……。極限状況のなか人肉を食べたとの証言まで飛び出す。ときに下手に出てなだめすかし、ときに恫喝し、ときに激高しブチ切れる奥崎謙三。あるとき吉沢の妹・野村の弟は奥崎と絶縁する。

奥崎は、妻と知人に遺族役を演じさせ、古清水・元中隊長を訪ねて真相を質す。また、山田吉太郎・元軍曹を再び訪ねて、悲惨な体験を証言せよと迫る。

1983年12月15日、奥崎は古清水宅を訪ね、居合わせた息子に拳銃を発射して逮捕された。3年後には妻・シズミが死亡。87年1月28日、奥崎は徴役12年の実刑判決を受けた。映画は、以上を新聞見出しや字幕で告げる。

●原一男は、田原総一朗の著書『青春 この狂気するもの』(三一新書 1969年)を読んで、大きな影響を受けたという。田原総一朗監督「あらかじめ失われた恋人たちよ」の助監督を志望したが、かなわなかった。その後、テレビの仕事で田原のアシスタントをした。「行き行きて、神軍」の公開直後、坂本は田原総一朗とともに原一男に会った。ホテルの一室にテレビ・VTRを持ち込んで、ベッドの上に置き、映画を見ながら、田原が原一男にインタビュー。その原稿は、月刊誌「潮」に田原名義で載った(書いたのは坂本)。誰か、図書館ででも探してくれ。坂本の手元にはない。

●マイケル・ムーアが「行き行きて、神軍」を高く評価し、原一男を尊敬しているらしい。その原一男が、もっとも影響を受けた映像の一つが、田原総一朗がディレクターをしていた東京12チャンネル「ドキュメンタリー青春」。そのなかでも傑作の一つ「おれはガンじゃない! 高橋英二の1年半」を10月24日に上映する。

ハーヴェイ・ミルク/THE TIMES OF HAVEY MILK 2008-06-27

●ハーヴェイ・ミルク/THE TIMES OF HAVEY MILK

●1884年(アカデミー最優秀長編記録映画賞受賞)

●製作:ロバート・エプスタイン、 リチャード・シュミーセン

●ナレーション:ハーヴェイ・ファイアスタイン

●87分

●ハーヴェイ・ミルク(Harvey Bernard Milk)は、アメリカのゲイ運動家。1930年5月22日生まれ。1977年、カリフォルニア州サンフランシスコ市の市政執行委員に当選。ゲイはじめマイノリティ差別反対を訴えて活動するが、1978年11月27日、同僚委員のダン・ホワイトによって、ジョージ・マスコーニ市長とともに市庁舎内で射殺された。その一生と、射殺事件のその後までを描くドキュメンタリー映画。

●20周年記念デジタルリマスター版DVDが2004年にリリース。これには監督ロブ・エプスタイン、ゲイとカミング・アウトしたハーヴェイの甥スチュアート・ミルクなどのインタビューが追加されている。

●参考
「ハーヴェイ・ミルク」(Wikipedia英語版)
「ハーヴェイ・ミルク」(Wikipedia日本語版)

●坂本メモ

・冒頭の入り方に、まず注目。文章の「最初の1行」に何を書くか、と同じこと。

・典型的、定番的なドキュメンタリーの作り。しっかりした構成は、制作の手本になる。

・インタビュー映像をいくつも重ねていく。その一人ひとりが、なんと表情・表現力豊かで、パワーに溢れ、魅力的なことか。日本人でこういうインタビューが撮れるだろうか。

・アメリカとは、アメリカ人とは、アメリカ社会とは、ボランティアとは、マイノリティとは、ゲイとは、裁判とは、陪審員制とは、銃社会とは……、立ち止まって考えさせられる見どころが、実に多い。

・悲しい、衝撃的な映像だが、しかし、おもしろい。このおもしろさは、どこからくるか。

・これはハーヴェイ・ミルクの映画である。だが、明らかにダン・ホワイトの映画でもあると思える。

●見逃した者は、仕方ないから、ここへ行け

夜と霧/NUIT ET BROUILLARD 2008-06-13

●夜と霧/NUIT ET BROUILLARD

●1951年、フランス(ジャン・ヴィゴ賞、フランス映画大賞受賞)

●製作:アナトール・ドーマン

●監督:アラン・レネ

●脚本:ジャン・ケイヨール(解説台本)ほか

●撮影:ギスラン・クロケ、サッシャ・ヴィエルニー

●考証:アンドレ・ミシェル、オルガ・ウォムセ

●32分

●ナレーション:ミシェル・ブーケ

●音楽:ハンス・アイスラー

●第二次世界大戦中、ヒトラー率いるナチス・ドイツは、600万人のユダヤ人を殺した。このジェノサイド(集団殺戮、民族浄化)、ホロコースト([とくにユダヤ人の]大虐殺)を淡々と告発するドキュメンタリー。日本における初公開時には、生首や死体の山の映像が残虐すぎるとしてカットされた。

NUIT ET BROUILLARD

※8分割されているが、同じ場所から全編を見ることができる。
※坂本が持っているDVD(日本語字幕付き)が、見つからないので、とりあえずこれで我慢してくれ。

●授業で坂本が言ったこと
「人間というのは、ここまでしょうもないことをやれるんだと、よく見ておきなさい。で、私はアウシュビッツを作ったヤツと、広島・長崎に原爆を落としたヤツは、五十歩百歩だと思う。私のオヤジ、君らのお祖父さんの世代の日本人は、こういうことをやっていたドイツ人と世界中でいちばん仲良しで、同じ陣営の味方としてこの前の大戦争を戦ったのだということも、忘れないでくれ」(授業で)

以下、「すべてを疑え!! MAMO's Site」日録メモ風の更新情報2005年7月29日付記事(一部修正あり)
●ひっちゃかめっちゃかな部屋を片付けていると、仏ドキュメンタリー映画「夜と霧」(監督アラン・レネ 脚本ジャン・ケロール 語りミシェル・ブーケ 1955年 32分)のビデオが出てきたので、つい見入ってしまう
●何もいうことはない。言葉を失う映像ですから。この映画に記録されたことをやったナチスドイツと組んで、私たちの国・日本が世界の5分の4と戦ったことは、何度でも思い出したほうがよい。とりわけテレビや映画をはじめ映像に関わる人は、見ておくべきです(日大の学生諸君の多くが未見なら、今度見せる)。映画の最後で語られる言葉は、何度聞いても私自身の問題として考えさせられます。以下に引用させてもらいます(どの程度、正確な訳なのかは知りません。字幕スーパーそのままです)。
●「我々の中のだれが戦争を警戒し知らせるのか。次の戦争を防げるのか。いまもカポが将校が密告者が隣にいる。信じる人。信じない人。廃墟の中に死んだ怪物を見つめる我々は、遠ざかる映像の前で希望が回復したふりをする。ある国のある時期の話と言い聞かせ、絶え間ない悲鳴に耳を貸さぬ我々がいる」(仏映画「夜と霧」より)
●遠ざかる映像!!――そう、現実のほんの一瞬、一部分だけを切り取った映像は、事実や真実をほんのちょっぴり含む場合がありうる。しかし、その映像は、自分で勝手にどこか遠くに歩いていくのではない。私たちが、放置し、やがて忘れ、映像から遠ざかるのです。NHKの解説委員長だった山室英男は、何年か前のGALACの座談会で「9・11で旅客機がタワーに突っ込む瞬間の映像を、大きく引き延ばし掲げている。それを見ていると……」と語ってくれたことがある。私は「瞬間瞬間に消えていく映像を静止画にして、いつも見えるところにおく。それはテレビのとてもよい見方ですね」と応じました
●蛇足をいくつか。「カポ」とはアウシュビッツなどの収容所で、ドイツ軍が収容者を監督させるために使ったユダヤ人(収容者の一部)やドイツの囚人のこと。脚本のジャン・ケロールはレジスタンスの闘士で収容所経験もある作家・詩人。彼が1945年に書いた「夜と霧の詩篇」が映画の原作といってよいでしょう。なお、この映画は1956 年(昭和31年)に輸入が試みられましたが「あまりにも残虐」として税関で止められ、製作7年後の1962年に1分弱のシーンを削除のうえようやく日本公開されました。最近、CSのシネフィル・イマジカでやっているのを見たら、当時の削除シーンはちゃんと入っています

●参考
ホロコースト(Wikipedia)

意志の勝利/Triumph Des Willens 2008-06-06

●意志の勝利/Triumph Des Willens

●1935年

●監督:レニ・リーフェンシュタール

●105分

●ドイツの古都ニュルンベルクで1934年9月に開催された「国民社会主義ドイツ労働者党」(ナチス)の全国党大会を記録したドキュメンタリー映画。

●授業では、導入部(ヒトラーがニュルンベルグへ到着まで)と、ヒトラーユーゲント集会(少年たちの鼓笛演奏、ヒトラーの演説、集会後のパレード)を見せた。以下は全編。

Leni Riefenstahl "Triumph des Willens"(英語字幕版)

●参考
「意志の勝利」(Wikipedia日本語版)

●ナチス党首のヒトラーは1933年1月に内閣を組織(首相)。33年8月に総統(=大元帥、首相+大統領)に就任し、第三帝国(ヒトラーのナチズム体制。ヒトラーは962年~神聖ローマ帝国、1871年~ドイツ帝国に次ぐものと見なした)を確立した。その直後のヒトラーの大宣伝ドキュメンタリー。もっとも成功した政治宣伝(プロパガンダ)映像の一つといえる。ドイツでは現在、この映画の一般上映は禁じられている。そのような危険な映像であることを踏まえて、見るように。

●坂本メモ

【導入部】
・レニは空、雲、太陽が好き。人は空が好き
・降臨、降誕のイメージ(「高貴なるもの」の表象)、鷲は舞い降りた
・ハイテク(高度な技術)の象徴。ヒトラーは、選挙戦に飛行機を駆使した世界最初の政治家の一人
・非常に気をもたせる。長い。オリンピアの冒頭もそうだった
・あり得ない映像(ヒトラーの肩越しに沿道・民衆・街並みを見る。併走車からか)
・子どもの顔・人々の顔のアップ、街のアクセント映像などを巧みにはさみ込む(モンタージュ)
・徹底して子どもたち、若者たちの「いい顔」を撮っていることに注意
・余計なナレーションをはさまない。見れば、説明抜き・理屈抜きに誰でもわかる映像
・大げさに高揚させる、ときに美しい音楽

【ユーゲント集会】
・あり得ない映像
・部分のアップ(ラッパ、人びとの顔、少年らの背伸び)
・効果的な音楽(期待を高める、気を持たせる、引っ張る)
・斜め映像(不安定な前がかり、つんのめり……意識のつんのめり)
・観衆(私たち)のアップとヒトラーのアップのモンタージュ(交互に、結局一体化)
・演説するヒトラーの周囲(半円状のレール上)をカメラが回る
(あり得ない映像、飽きない映像、ありえないアングル、ゆっくりじっくり「客観的に」 観察させる、飽きさせない、「ためつすがめつ眺めたが、これは本物だ! すごい!!」と思わせる効果)
・スタジアムのパンとほぼ同スピードであることに注意(同じ目で見る、つながっている、同じ客観性)
・沿道の正しい撮り方(前を撮ってはダメ)
・9分47秒間に約146カット。1分間に約15カット使っている。ちなみに、オデッサ階段の虐殺シーンが モンタージュの手本とされるエイゼンシテイン『戦艦ポチョムキン』は86分で1346カット。これは1分間に15.65カット。

美の祭典(オリンピア第2部)/FEST DER SCHONHEIT-OLYMPIA TEIL II 2008-05-30

●美の祭典(オリンピア第2部)/FEST DER SCHONHEIT-OLYMPIA TEIL II

●ドイツ、1938年(ヴェネツィア国際映画祭金賞)

●監督:レニ・リーフェンシュタール

●撮影:ウィディ・ジールケ

●音楽:ヘルベルト・ヴィント

●97分

●「民族の祭典」と合わせて「オリンピア二部作」をなす。1936年オリンピック・ベルリン大会の記録映画。こちらが後編・第2部。第1部に出てこなかったオリンピック選手村のスケッチ、トレーニングの様子、陸上以外のさまざまな競技などを描く。

民族の祭典(オリンピア第1部)/FEST DER VOLKER-OLYMPIA TEIL I その2 2008-05-16

●民族の祭典(オリンピア第1部)/FEST DER VOLKER-OLYMPIA TEIL I

●ドイツ、1938年(ヴェネツィア国際映画祭金賞)

●監督:レニ・リーフェンシュタール

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※以下、全面的にネタバレです。ご注意

●坂本メモ(内容というか、あらすじ。★は坂本の意見または注釈)

(A)タイトル~導入部

荘厳なファンファーレ。「オリンピア」の題字。「オリンピック・ベルリン大会記録映画」「クーベルタン男爵に捧ぐ」「全世界の若者の名誉と栄光のために」の文字。いずれも石彫風。

ギリシャ遺跡(オリンピア遺跡? パルテノン神殿?)。朝もやの中から、夜明け、朝・昼の光。
★なめらかな移動撮影。空を見上げるアングル。

石彫の顔アップ。ヘレニズム風彫刻の人体像または神像。ルネッサンス的な肉体賛美。
★光と影の巧みな使い方。スモークの効果。逆光のシルエット映像。

円盤投げの彫刻が、同じポーズで重ねた人間の映像に置き換わる。古代スパルタ風の、ほとんど全裸(陰部を小さな布で隠しただけ)の男が、円盤を投げる。続いてやり投げ、砲丸投げ。

女たちの玉投げ。ロープにリング。若い女たちもほとんど全裸。やがてダンス。美しい牧歌的な音楽。光きらめくそよ風のなかの草原や水面を背景に。

女たちのダンスが太陽讃へ。太陽が燃え上がる炎に置き換わる。ファンファーレ。その火の中から、男がトーチを掲げ、走り出す(★一部スタジオ撮影?)。遺跡のなかで次の走者へリレー。海岸を走る。やがて聖火は、街へと駆け下りていく。人びとの声援のなかをリレー。走者は上半身裸。

ギリシャの地図。聖火リレーがたどった国(国・都市の名、国旗、空からの絵)が次々と現れる。ギリシャ→ブルガリア→ソフィア→ユーゴスラビア→ベオグラード→ハンガリー→ブダペスト→オーストリア→ウィーン→チェコスロバキア→プラハ→ドイツへ。ドイツの空撮→スタジアム全景→ワシに五輪マークの鐘の音→ファンファーレと人びとの歓声。

★ここまで、ムチャクチャ長い。15分ほど。まだかまだかと気を持たせ、期待を膨らませる。とにかくキレイ。あの時代に堂々とおっぱいを出す映像はすごい。

(B)スタジアム~選手団入場~開会宣言~聖火入場

大会ファンファーレ。各国国旗掲揚。英・日・ドイツ(?鉤十字ではない。★モノクロなので、よくわからん)・五輪旗。スタジアムの観客映像が挟み込まれる。「ハイル・ヒトラー」のスタイル(手を掲げる)の観客のカットも(★一斉にそう言ったかどうかは不明。ヒトラーの入場時や大会開会宣言時の映像を、入場シーンに挟み込んだのかも)。

選手入場。ところどころに「ハイル」の手の観客映像。ギリシア、スウェーデン、イギリス、インド、日本、アメリカ、オーストリア→(ここで「ハイル」の手、ヒトラーのアップ)→イタリア→フランス→スイス(国旗を振り回し陽気)→大会主催国ドイツ(ドイツの旗は鉤十字=ハーケンクロイツ。観客の大歓声。ヒトラーのアップ。隊列に親衛隊も?)

ヒトラーによる開会宣言。帽子は取っている。満足げ。

大会ファンファーレ。祝砲。はとの群。はとの群から重ね映像でベルリン市内に入った聖火リレーに転換。ゲート通過。ファンファーレと大歓声。フィールド内を走る。音楽は、ギリシャ遺跡から走り出すときに流れた音楽。聖火台に点火。「ボワッ」と火が着く音。
★おそらくあんな音はせず、また、うまく同録できないはず。つまり、後からかぶせたアフレコ=after-recordingだろう。

音楽は合唱に変わる。競技場に夕暮れが迫る。そして、聖火台に燃える火と太陽が重なり、そのアップ映像。
★開会式中の実時間とは考えにくい。たぶん別撮り映像。

(C)各国報道~競技

空にかかる(ゲート間に渡した五輪マーク)。いよいよ競技開始。各国アナウンサーたちが、それらしい服装で、「いよいよ競技開始です」というようなことを言う。
★光が人工的で、ピントが合いすぎ、不自然。何か言ってから双眼鏡を覗くのも、いかにも演出っぽい。別撮り映像。

(1)男子円盤投げ

まず米カーペンター、ついで独、ノルウェーの選手が投げるシーン。「ギリシャのシラス、47メートル75」というようなナレーションはアフレコ(★以下、全編にわたって同じ)。歓声もほとんどはアフレコ。

影を映す、おもしろい映像。スローモーションの多様。「USAカーペンター」の観客連呼もアフレコ。カーペンターが金メダルで星条旗。

★言うまでもなく、スローモーションシーンなのに普通に聞こえる音声は、すべてアフレコである。映画最初の金メダル・国旗・国歌はアメリカで、さすがアメリカに気を遣った感じ。ただし、最初にこの競技を選んだのは、レニの趣味だろう。導入部も円盤投げから入っている。

(2)女子円盤投げ

独マウエルマイヤーの次が児島・ヤーパン(日本)。ポーランド選手のシーンは、やや早回しでユーモラスに描く。峰島・ヤーパンも登場。ただ、日本選手は記録こそ論外だが、二人のアップシーンあり。ポーランドのバソウナは、今度はスロー映像。マウエルマイヤーの最後の投げもスローで、「オリンピック新記録!」。

(3)女子やり投げ決勝

やりの握りを確認したりする走り出し直前のシーンと、実際に助走して投げるシーン。
★切り張りでつながっているが、微妙に違う感じ。別撮りだろう。

(4)女子80メートルハードル

予選を、スタート地点真後ろからゴールに向かって撮る(★「こんなのもやってます」って、息抜き映像。だが、映像としてのおもしろさ、あまり見ないアングルを、明らかに狙っている)。レースから競技場観客席へパン。聖火台越しに見るレース(★撮りたいのは聖火台)。決勝はイタリアのバッラが制す。表彰台シーン(★伊ムッソリーニも、ここらで喜ばせておく)

(5)男子ハンマー投げ

フェンス周囲をぐるりと回って撮る(★『意志の勝利』のユーゲント大会でヒトラーを撮ったのと、まったく同じ手法)。回転する足許のアップ。国柄がにじみ出た応援団映像がはさまれる(★別撮り映像かも)。
スローモーションの多用。独ハインの記録に喜ぶヒトラー。地面に置かれたハンマーのアップ→握る手のアップ→上半身のアップ(★肉体美を撮りたい。顔や国は関係ない)。ハンマーが落ちる場所・瞬間のアップ(★ありえない映像。実際の競技中に、そんなの撮れるはずない)。ドイツが1位2位独占。喜ぶヒトラー。鉤十字の掲揚。

(6)男子100メートル

米黒人のオーエンス、断トツに早い。当時の短距離走は、スタート台がなく、土に穴を掘るだけ。ファウルで「なんだよ」という感じの映像。次のレースでオーエンスは10秒2。世界新だが追風のため未公認。(★「USA USA オーエンス オーエンス」と応援するのは、たぶんアフレコ・後挿入)。決勝もオーエンス。アップ映像。

(7)女子走り高跳び

カメラを地面スレスレに置き(穴を掘って設置したかも)、上から見上げる映像。さまざまな角度からの映像。顔が切れて足先まで映っている映像(他の競技でも出てくる。★顔には興味がない)。ハンガリーが初金メダル。

(8)男子砲丸投げ

独ベルケのアップ→心配そうなヒトラーのアップ→16メートル20で逆転優勝→ヒトラー大喜び。

(9)男子800メートル決勝

1位は米黒人ウッドラフ

(10)男子三段跳び

日本の得意種目を、大島、田島、原田とスロー映像で紹介。田島は15メートル76のオリンピック新記録。喜ぶ日本人。再び田島。日本応援団の田島コール。超スローのアップ映像。16メートル00の世界新記録で優勝。日の丸の扇子を振って喜ぶ日本人。初の君が代。月桂冠をかむる田島の顔アップ。各国の旗の列で、日の丸をもっとも大きく撮す。
★同盟国日本の頑張りに、たいへん好意的だ。

(11)男子走り幅跳び

米オーエンスのスロー映像。続く独ロングに、双眼鏡を持つヒトラーは「よしよし」という感じ。結局、オーエンスが金メダル。米独日の旗(田島が銅メダル)。

(12)男子1500メートル

ニュージーランドのブロックがカニンガム、ベッカリらとの激闘を制し、3分47秒の世界新で優勝。

(13)男子走り高跳び

足の影、足をほぐすアップ、バーの高さを測る、土をならすなど、変わった映像から入る。日本・朝隈、矢田、田中らが頑張るも、米ジョンソンらが金銀銅独占。タッタッタと走る音は、アフレコ。見上げる映像、スローモーション映像を多用。なお、当時は背面跳びはない。また、マットではなく砂場に落下する。

(14)男子110メートルハードル

準決勝で「選手は右から誰某。××のライバルは△△。××が並んだ。××が1着でゴール」と実況ナレーションが入るが、スローモーション映像だから、実はヘン。決勝は、今度はやや早回しっぽい。同じようにナレーションが入る。

(15)男子やり投げ

スタート、助走、投擲、やりの行方を確かめながらサークル内に身体を残す、その残し方を丁寧に撮る。投げて、放物線を描くやりを撮る。スローモーション映像に、応援のかけ声が入る。独選手の上半身アップには、鷲に鉤十字のマーク。ドイツが優勝し、喜ぶヒトラーとゲッペルス。

(16)男子1万メートル

前半は日本の村社がトップ。日本応援団のアップ。一目インド人とわかる女性観客のアップ。先頭集団が周回遅れの選手を抜き、「インドのシンは周回遅れ」のナレーション(★インド女性は、後から別撮りかも)。やきもきして貧乏ゆすりをするヒトラー。小柄な村社は勇敢に頑張る(というようなナレーション入る)が、結局フィンランド3選手が抜き、彼らが金銀銅独占。

(17)男子棒高跳び

地面すれすれからの、普通ではありえない映像(穴を掘った)。この時代、棒高跳びもマットはなく、砂場に落下する。影だけを映す。バーのすぐ脇から、バーに近づき、越え、落下していく選手に焦点を合わせて撮る。だんだん日が暮れてくる。選手の識別ができない逆光映像→聖火→雲に隠れる太陽。夜景。
「決着つかず、5時間の勝負。アメリカ3選手と日本2選手の戦い」というナレーション。以下、真っ暗な中での棒高跳び競技。

★選手に各方向から、競技中ではありえない光線が当たっている。つまり、以降は実際の競技の様子ではなく、再現または「やらせ」映像である。観客も日本応援団・アメリカ応援団それぞれ再現したものと思われる。これから走り出す選手の競技中としては近すぎるアップ、スローモーション映像に入る声援(たとえば西田コール)なども、後からの挿入映像である証拠。応援団以外、一般観客が映っていないのもヘン。高さ表示を変えるシーンでは、背景に(いくら暗いといっても)観客席が映るはずだが、空っぽではまずいということで、スモークを焚いている。

最後は、西田と米メドウスの勝負となり、西田が失敗。「力尽きた」のナレーションに続き、メドウスが跳んで「成功!」。大喜びする米応援団。二人の握手シーン。メドウスの顔のアップから、星条旗のアップへ。

★以上も再現映像。レニによると、「暗くてうまく撮れなかったので、頼み込んで再現してもらった」。このように、ドキュメンタリー映像では、撮影される対象と作り手が示し合わせて、「ありえない映像」を作ってしまうことがある。現在のテレビでは、「本人による再現」というように断るのが普通。

(18)女子400メートルリレー

五輪旗。観客。「予選でドイツが世界記録」のナレーション。スタートからドイツが爆走。映像は早回しっぽい。立ち上がり、身を乗り出すヒトラー。隣のゲッペルスも立ち上がる。「2位との差がぐんぐん開く。優勝確実」のナレーションの直後、最終走者がバトンを落とし、「なんと、バトンを落としました」。ヒトラーは座り、「なんてこった、残念」というように膝を叩く。

(19)男子400メートルリレー

米第1走者はオーエンス。ムチャクチャ早い。記録は39秒8でアメリカ優勝。
★映像は早回し(というか、カットをところどころ抜いている)。40秒弱なければならない映像が、34~35秒分くらいしかない。

(20)男子1600メートルリレー

イギリスが勝ち。

.(21)男子マラソン

ファンファーレ。スタート時の足のアップ。「優勝候補はナンとソン、ヤーパン」のナレーション。スタジアムを出る。前回優勝のアルゼンチンのサラバがトップ。伴走する車から選手をとらえる映像。ドイツ放送局8キロ地点の中継(っぽい)映像(★後から別撮りした可能性大)。ソンは3位通過。走る選手の映像は、ややスローに見える。やがて、疲れるサバラ。

給水ポイントの映像。歩く選手。顔をぬぐう選手。ゆっくりと休み休み水を飲む選手。

35キロ地点の中継(っぽい)映像。「サバラ棄権。ソン・日本がトップ」のナレーション。沿道の日の丸。ソンの力走。ややスローのアップ。

あり得ない、こんな映像。通り過ぎる麦畑、木々など。走る影。上半身裸で走る「謎の男」のアップ。近すぎる顔のアップ。腕から握り拳のアップ。選手から見た、走る足許の一歩一歩の映像。緊迫感、過酷さを演出する音楽。
★いずれも、別撮りの挿入シーン。選手(ソン本人に頼んだとも)に首からカメラを提げてもらって撮ったりしている。

競技場が近づき、ドイツ軍によるファンファーレ。ソンの入場。日の丸を振る日本人。ナレーション「マラソンの優勝は、ソン、ヤーパン」。ナンも3位。

続々ゴールする選手たち。名前が出て、マトモなのは6位くらいまで。あとは、ゴール後のうつろな表情。ピンが合ってない疲れ果てた選手の表情(★かえって臨場感あり)。フラフラでたどり着く選手。ゴールと同時に倒れ込み、そのまま担がれていく選手(★やりすぎと思われるほどの、過酷さの演出)。

表彰台。日本が1位と3位。月桂冠を深くかむったソンは、終始下向き(★むろん、喜んでいるようには、まるで見えない。ソンもナンも、日本の植民地・朝鮮出身の朝鮮人であって、日本人ではなかった)。君が代(★彼らにとっては屈辱の、サイテーの日の丸であり君が代だった)。この映画で、国歌が全曲(カットなしで)流れたのは、このシーンの君が代のみ。

(D)閉会式~フィナーレ

聖火に五輪旗の映像。閉会式。音楽は合唱に。各国の旗が振られるマスゲーム。鐘の大映し→五輪マーク→競技場→その空に五輪旗→五輪旗のアップ。

内容メモは以上

民族の祭典(オリンピア第1部)/FEST DER VOLKER-OLYMPIA TEIL I その1 2008-05-09

●民族の祭典(オリンピア第1部)/FEST DER VOLKER-OLYMPIA TEIL I

●ドイツ、1938年(ヴェネツィア国際映画祭金賞)

●監督:レニ・リーフェンシュタール

●撮影:ウィディ・ジールケ、 ハンス・エルトル 、ワルター・フレンツ、グツィ・ランチェナー、クルト・ノイバート、ハンス・ミシャイブ

●音楽:ヘルベルト・ヴィント

●138分

●「美の祭典」と合わせて「オリンピア二部作」をなす。1936年オリンピック・ベルリン大会の記録映画。こちらが前編・第1部。

以下、「GALAC」2000年11月号の坂本巻頭言

シドニー直前、NHKが放映した
オリンピック映像を見て――

●シドニー・オリンピックの開幕直前、NHKはBS第2で、映画「東京オリンピック」(1965年、市川蓖監督)、ベルリン・オリンピックを描いた「民族の祭典」「美の祭典」(1938年、レニ・リーフェンシュタール監督)を立て続けに放映しました。

●映像としてのスポーツソフトの「見せ方」の原形は、すべてこの映画3本に凝縮されて入っていると思えます。そしてスポーツを描く一級品は、歴史や社会を描いても一級のドキュメンタリー。これは制作者の問題意識の高さや視点の確かさを示します。NHKは本当によいものを見せてくれたと思いました。

●ただ、疑問や注文があります。著作権料や契約の問題があるのかもしれませんが、せめて地上波のNHK教育で、もっと早い時間に放映してほしかった。何より子どもたちに見せたい映像だからです。また「民族の祭典」の字幕スーパー処理は、いかにもNHK的なことなかれ主義。映画のクライマックスはマラソンで、日の丸をつけたソンとナンが金銀を独占する。しかし、実況は「ヤーパンのソン」でも、字幕は国名なしの「ソン」だけ。占領下の朝鮮や中国は日本ではないといいたいらしいが、実に馬鹿げた発想です。

●占領下の朝鮮や満州は純然たる「日本国」の一部。その歴史は隠さずに正面から見詰めないと、過去の精算などしようがない。字幕は「日本のソン」として、放映前後に「当時は軍事的に占領し、強制的に日本国としていた」とでも注釈をつけるのが本当でしょう。買ってきた映画を流すだけでも、放送局の姿勢はつねに問われるのです。

●9月15日「東京オリンピック」のナレーションを務めた三国一朗さん逝去。合掌。

2008年度 放送特殊研究V シラバス 2008-04-18

放送特殊研究V             

担当:坂本 衛

通年 4単位 3年以上 選択 江古田校舎 放送学科専門科目

授業テーマ:ドキュメンタリーの視聴と研究

履修条件:なし

授業のねらい
 テレビのドキュメンタリー番組に元気がない。番組数が減っているうえに、深夜に放送されることが多く目にする機会も少ない。そこで、テレビ・映画を問わず、過去に作られ一定の評価を得ているドキュメンタリーを7~8本視聴する。そして、そのドキュメンタリーの時代背景、作者の狙い、手法、特質、美点や欠点などについて議論し、研究を重ねていく。以上を通じて、テレビ・ドキュメンタリーの可能性と課題を探る。

授業の方法
 ドキュメンタリー1作品について、(1)教員による簡単な解説、(2)全員によるドキュメンタリーの視聴、(3)各人による感想の発表、(4)全員による時代背景、作者の狙い、特筆すべき手法、作品の特質、美点、欠点などに関する議論、(5)まとめを1セットとし、これを繰り返す。授業3回を1セットの目安とする。小論文執筆、作者による講演と対話なども適宜行う。

授業計画
1  前期ガイダンス(1):教員の自己紹介、本授業の狙い
2  前期ガイダンス(2):学生の自己紹介
3  視聴と研究(1)アラン・レネ『夜と霧』1955
4  同上
5  同上
6  視聴と研究(2)リーフェンシュタール『オリンピア』1938
7  同上
8  同上
9  視聴と研究(3)土本典昭『ある機関助手』1963
10 同上
11 同上
12 視聴と研究(4)エプスタイン『ハーヴェイ・ミルク』1984
13 同上
14 同上
15 前期まとめ:小論文(1本を選び自由に論じる)
16 視聴と研究(5)田原総一朗『ドキュメンタリー青春』196?
17 同上
18 同上
19 ドキュメンタリー作家による講演と対話(交渉中)
20 視聴と研究(6)原一男『ゆきゆきて、神軍』1987
21 同上
22 同上
23 視聴と研究(7)綿井健陽『Little Birds』2005
24 同上
25 同上
26 視聴と研究(8)ギャラクシー賞受賞作から1本(未定)
27 同上
28 同上
29 後期まとめ:小論文(1本を選び自由に論じる)
30 通期まとめ:テレビ・ドキュメンタリーの可能性と課題

教科書:使用しない。

参考書:授業中に適宜指示する。

成績評価:出席回数、授業中の発言、小論文によって総合的に評価する。

その他:視聴回は、本授業を取っていない者も参加してよい。

e-mail:教員からの連絡に使用する場合がある。

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●ブログ開設は2006年ですが、1999年からマスコミ演習、マスコミII、放送特殊研究Vといった授業を担当しており、2005年以前のレジュメなど古いものも置いてあります。(坂本 衛)
 

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